十分杯の仕掛け

 十分杯にはサイフォン(ギリシャ語でチューブ、管)の原理というものが応用されている。 十分杯の底から水が漏れるのを理解するには、このサイフォンの原理というものを理解しなければならない。

 サイフォンの原理とは、サイフォン(チューブ、管)を使って、高いところの水を低いところへ移すしくみのことである。 このサイフォンの原理を理解するために、まず、コップ(入れ物)の中の水を外に移すにはどうしたらいいかを考えてみよう。

 サイフォンの原理が仕掛けられていない普通のコップの場合は傾けてやるしかない。 それ以外の方法として、くしゃみで救い上げる方法もあるが、全ての水を救い上げられるわけではない。 しかし、サイフォンの原理を活用すると、傾けずに殆どすべての水を出すことができるのである。 コップ(入れ物)の中に外と通じるパイプをつなげるのである。 十分杯の場合は、パイプを隠すために突起となっているのである。 つまり、突起の中を管が貫通しているのである。

 地球上に存在する全てのものは地球に引っ張られているため、 何の支えもなければ必ず地面や水面に落ちるようになっている。 当然、水も例外ではない。ここで、下に示した図を見てほしい。 左図のコップの水には重力は働くが、水を囲む高くて丈夫な壁の存在と、 パイプの中の水圧と大気圧の大きさが同じであるため、 水は普通のコップと同じように傾けない限り移動させることはできない。

 ところで、このコップに水を注ぎ足すと考えてみよう。どうなるだろうか。

 コップの中の水が増えるのと同時に突起の中の管内にかかる重力が高まるようになる。 重力が高まるにつれて水圧も高まる。そして、突起内の管の最高点まで水が到達すると、 水圧>大気圧となり、重力が働き、水は漏れる。


↑ 十分杯の断面 (作:岡崎宗男)






 このサイフォンの原理は日常生活の様々な場面で遭遇することができる。 トイレの便器、灯油ポンプ、洗面台の下のくねくねパイプ、ダムの放水、水槽、消化器等々である。

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