2015年7月17日金曜日

ロレックスと十分杯

楽九は韓国生まれ、韓国育ちである。

大学時代までを韓国で過ごした。

生まれたところは、皆さんはなかなか想像できないど田舎。慶尚北道安東郡の右端の村。

電気が通ったのが小1、バスが初めて来たのが小4、アスパルトができたのが約10年前。

村に中学校がなかったので、入学式から自炊。ちなみに、当時は義務教育ではなかった。

そのため、中学校になんとか入学はしたものの、やめていく友人が何人かいた。

自炊の話に戻ろう。練炭の上に鍋を乗せてご飯を炊いた。

当時、周りから最も注意されたのが二酸化炭素中毒で、最も大変だったのがご飯を炊くことだった。

要するに、火加減が難しいのである。

電気炊飯器もではじめた頃だったが、停電も頻繁にあったもので、結果的に練炭のほうが我々自炊生には評判が良かった。

中学入学前に教えてもらうのが練炭の火加減だったが、うちの村で練炭を利用する家はなかったため、実に困った。

なぜなら、うちの村はマキを燃料としていたからである。

なかなか想像できないだろうが、楽九はそういうところで育った。

高校時代は大邱という当時韓国3番目の都会で過ごした。

何一ついい思い出がない。
ひとクラス約60人✖️1学年15クラスということで、1学年で900人。

部活?とんでもない。夜9時まで学校にいなければならなかった。

高校時代というよりは収容所時代。

大学も同じところで過ごした。

両親は大変だった。

ダムが出来て田舎から出てきて、リヤカーを引きながら商売を始めた。

当時楽九は家庭教師をしていた。そこそこいい収入だった。

2年が終わってから兵隊へ行ってきた。諸般の事情でちょうど半年だけ。

3年に復学して焦ってやったのが日本語だった。楽しかった。

3年が終わって休学して東京の日本語学校で1年間勉強した。

ドカタ、ティッシュ配り、皿洗い。。。

この1年間がむしゃら勉強した。とにかく勉強した。

そして、復学して日本語で受ける試験はほとんど受けてみた。

その中に、新潟県費留学生選抜試験というのがあり、運良く受かった。

とても嬉しかった。今でも鮮明に憶えている。

勉強とは縁がないと思っていたところ、大学院の試験も受かり、また国費留学生に選抜された。

私なんかに国費留学?

図々しいのはじゅうじゅうわかっていたが、四方八方が塞がっていたので勉強した。

新大時代はいい先生といい仲間に巡り合った。

しかし、今の時点で振り返ってみると、問題の本質に近づく研究はできなかった。

理由は幾つか考えられるが、難しい問題やグラフを理解するのが大事だと思っていたからだと思う。

さらに、その原因は読書量の少なさとオリジナリティーの大事さを十分わかっていなかったからだと今は思う。

そして、縁あって長岡大学で教鞭をとることとなった。もう15年目である。

おかげさまでなんとか生活ができるようになった。

そして、研究活動もそこそこやった。

ある機関から委託調査を受けて、それなりの収入が入った。

それで、ロレックスを買った。子供の時からロレックスの名は知っていた。

成功のシムボルだという話を数回耳にしたことがあった。

どこかに自分を成功した人間のグループに無理やり高級時計という入場券で入れたかったかもしれない。

今考えると笑ってしまうけど、前半で長々と書いたように、私のような成長期を過ごした人にはあるかもしれない。

そして、もう一つの別の理由もある。

楽九は中小企業や製造業の技術について研究している。以前から不思議だった。

テレビを見るとものづくりにおける日本の技術は世界一だと自慢しているけど、時計やブランド物はほとんどが欧米の物ではないかと思っていた。

なぜ、日本は作れないだろうか。

なぜ、日本人や世界中の人たちはブランド物の中で特に欧米の物を好む理由は何かが疑問になっていた。

それなら自分で使ってみようと思った。

お金もあったし。自分なりの答えは見つかった。

技術、デザインのオリジナリティー、実用性(蛍光と日付)。4年間大事に使った。

それを先月に手放した。

私は先述した問題意識があってロレックスをつけているが、十分杯の広報活動をする上で、何人かの人たちはロレックスをみて矛盾を感じたかもしれない。

誰よりも後ろめたかったのは実は私自身だった。

今は腕時計がない。目がかなり悪いため、腕時計がないと困る場面が多い。

我慢の領域を超えたら、一つ考えたい。

とにかく、ロレックスを手放してから、なぜかわからないけど心がすっきりした。

晴れ晴れとしてきたというのが近い表現かもしれない。

どうでもいい物を持つこと、所有することから解放れた。

今は完全に自由の身となった。

ロレックスは本当にいい時計だが、それ以上に負担を感じない所有や自由の方がいい。

十分杯が私にくれたのは自由である。十分杯様、万歳!

ー樂九ー

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